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細川俊夫《エチュード II》世界初演

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©Kaz Ishikawa

細川俊夫の新作、ピアノのための《エチュード II―点と線》が2月8日、電気文化会館(名古屋)で小菅優のピアノ独奏により世界初演されます。この作品は細川が現在作曲中であるピアノのための《エチュード》シリーズ(全6曲)の第2曲で、シリーズ第1曲にあたる《エチュード I―2つの線―》も共にプログラミングされています。シリーズとしての面白さ、各曲の性格の違いを若手実力派のピアノでじっくりと楽しめる機会となりそうです。


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細川俊夫
エチュード II 点と線
ピアノのための

委嘱:中電不動産株式会社
演奏時間:約7分


《エチュード I》では、二つの線が、それぞれ毛筆のカリグラフィーの線のような運動性を持ち、その二つが陰と陽のように絡み合い、音のコスモスを生み出していく。それに対して《エチュードII》は、本来線的な形態を持ったもの、二つの線(メロディー)を解体して、それを点として提示する。その点は、装飾音を持ちながら、あたかも線香花火が一つの中心から静かにその周辺に破裂して点滅するように、音のコスモスが形成される。その点の元々の線は、自由なカノンのように、時間を様々にずらして重奏されていく。

そうした点的な部分と、線的なメロディーが静かに余韻として重なり合い、ハーモニーを形成していく部分が、交互に提示される。

夜の闇に静かに破裂する線香花火のような孤独な音たち。

中電不動産株式会社の委嘱作品で、初演者の小菅優に捧げる。

細川俊夫

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ピアニスト,ピアニズム” Vol. 10 小菅優 ピアノ・リサイタル
2013年2月8日(金)19:00開演
電気文化会館 コンサートホール
http://www.chudenfudosan.co.jp/bunka/denbun/topics/detail/8534
小菅優(ピアノ)


関連ニュース


権代敦彦《ダイイング・プロジェクト》演奏用楽譜の販売開始

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権代敦彦の合唱作品《ダイイング・プロジェクト》の楽譜を、当オンラインショップ限定で販売いたします。


権代敦彦
《ダイイング・プロジェクト》
Dying Project

混声合唱*とピアノのための

B5判/116ページ
当オンラインショップ限定販売
¥3,360 (税込)

オンラインショップへ

混声合唱とピアノのための《ダイイング・プロジェクト》(2002)は、第13回「創る会」会員の委嘱により作曲。2002年8月11日、東京で行われた第13回「創る会」において、田中信昭指揮「創る会」合唱団と中嶋香によって初演されました。テキスト(英語と日本語)は『チベット死者の書』、『阿弥陀経』、与謝野晶子『白桜集』から集められています。曲の進行に沿って奏者が舞台上で移動する、シアトリカルな要素を伴った作品です。演奏時間28分。

*ソプラノとアルトは各9人以上必要。テノールとバスは各8人以上が望ましい。

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細川俊夫《巫女》世界初演

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細川俊夫の新作、3台のアコーディオンのための《巫女》が、3月9日に浜離宮朝日ホールで行なわれる「御喜美江アコーディオン・ワークス2013」において世界初演されます。演奏は御喜美江、大田智美、ヘイディ・ウオスイェルヴィ。

今回でシリーズ第21回を迎える「御喜美江アコーディオン・ワークス2013」。全6曲のプログラム中4曲が世界初演、または日本初演という意欲的なプログラムのなかでの初演に期待が高まります。


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©Kaz Ishikawa

細川俊夫
巫女
3台のアコーディオンのための

委嘱:御喜美江
演奏時間:10分


御喜美江さんとの出会いで最初のアコーディオン曲『メロディア』を作曲したのは1978年から1979年にかけてである。私はまだベルリン留学中でユン・イサンの生徒であった。幸いなことにこの23歳で書いた『メロディア』は、それ以降の30年間で、アコーディオン奏者のレパートリーとして定着し、今でも頻繁に演奏されている。この作品は日本の笙をイメージしたと、作曲当時のプログラムノートに書いたが、実際には笙のことはほとんど知らなかった。私が笙奏者、宮田まゆみさんに出会ったのは1985年のことであり、そのときに初めて笙という楽器を深く知ることになった。笙と雅楽との出会いは、私の音楽に決定的な影響を与えたが、それを深く知らないうちにも無意識に私の感性は、アコーディオンに笙の響きを聴いていたのである。

その作品から33年が経過した後、私は再び御喜美江さんのために、今度は3台のアコーディオンのために作曲することになった。『メロディア』で無意識のうちにイメージしたこの楽器を笙の『スーパーインストゥルメント』ととらえるアイディアは、この作品でより深く浸透している。第1奏者が巫女、そしてその背景の2つの楽器はその巫女の背景の宇宙であり、自然であると捉えようとした。神話的でコスモロジーを孕んだ音楽。

音楽は、私たちの内に隠された宇宙的な見えない力を、音によって表現するのだ。その音を生み出し、宇宙の奥底の流れと結びつける媒介としての演奏家は、私にとってシャーマン(巫女)である。御喜美江さんは、アコーディオンという楽器で、私たちの内に隠された神秘の力を伝えてくれる「巫女」であるに違いない。「MI-KO」という題名は、MIE+AKKO(Akkordeon, アコーディオンのドイツ語綴りから)の文字の連想から生み出された。

笙的な音の堆積がメロディーを形成してゆく。その場合、必ず光と影、男と女、上昇と下降、高と低という二つの異なった性格の要素が、互いを殺し合うことなく、互いに補い合うことで一つの音宇宙を形成する『陰陽』の考え方を、この作品の中心原理とした。最後には、混沌とした低音群から浄化された世界が形成され、音楽は祈るように消えてゆく。

長い間の友情で私を支えてくれた御喜美江さんにこの作品を捧げる。

細川俊夫

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御喜美江アコーディオン・ワークス2013
2013年3月9日(土)14:00開演
浜離宮朝日ホール
http://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/event/2013/03/event1183.html
御喜美江、大田智美、ヘイディ・ウオスイェルヴィ(アコーディオン)

細川俊夫 ― 新作と再演予定2013

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巫女》3台のアコーディオンのための|世界初演|3月9日@浜離宮朝日ホール(東京)|御喜美江、大田智美、ヘイディ・ルオスイェルヴィ(アコーディオン) http://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/event/2013/03/event1183.html松風》オペラ(1幕)|アメリカ初演|5月24, 26/6月1, 4, 8日@スポレート・フェスティヴァルUSA(サウスカロライナ、アメリカ)|Chen Shi-Zheng(演出)、Pureum Jo(ソプラノ)、Jihee Kim(ソプラノ), Thomas Meglioranza(バリトン)、Gary Simpson(バリトン) http://spoletousa.org/events/matsukaze/班女》オペラ(1幕)|6月22, 24, 30日@ベルリン国立歌劇場(ドイツ)|カリスト・ビエイト(演出)、Günther Albers(指揮)、インゲラ・ボーリン(ソプラノ)、ウルズラ・ヘッセ・フォン・デン・シュタイネン(メゾ・ソプラノ)、 ゲオルク・ニグル(バリトン)、シュターツカペレ・ベルリン http://www.staatsoper-berlin.de/en_en/calendar/10698177 新作(ソプラノとオーケストラのための)|世界初演|8月25日@フェルゼンライトシューレ(オーストリア)ザルツブルグ音楽祭2013|アンナ・プロハスカ(ソプラノ)、シャルル・デュトワ(指揮)、NHK交響楽団 http://www.salzburgerfestspiele.at/concert/orchestra-concerts-2013/nhk-symphony-orchestra 東京フィルハーモニー交響楽団|サントリーホール国際作曲委嘱シリーズNo.36<テーマ作曲家 細川俊夫>|9月25日@サントリーホール(東京)|ジェロエン・ベルヴェルツ(トランペット)、バーバラ・ハンニガン(ソプラノ)、パブロ・ヘラス=カサド(指揮)

権代敦彦《指の呪文》世界初演

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権代敦彦の新作、ピアノのための《指の呪文》が、3月10日に大阪大学で行なわれる「ベーゼンドルファー1920 演奏とお話 Vol. 2『音楽の力、音楽の無力』」において世界初演されます。ピアノは北村朋幹。大阪大学会館が所有する1920年に製作されたベーゼンドルファーのピアノによって、権代の新作のほか、昨年初演の権代《カイロス―その時―》、シェーンベルク、ベートーヴェンの作品が演奏されます。加えて、大阪大学教授の伊東信宏と権代、北村の3人によるトークも予定されています。

このイベントでは「音楽の力、音楽の無力」をテーマに、音楽の可能性と限界について考察されます。災害や戦災といった壊滅的な状況において「音楽が生きる力を与えてくれた」「音楽など聴いてももう何も感じられない」としばしば発せられる聴衆の相反する声。権代をはじめとする、この難しいテーマを考察すべく厳選された作品群の演奏やトークを通して、音楽に何ができるのか、復興とは何なのか、そして「音楽の力」について作曲家と演奏家がそれぞれ論じ、どのような答えを出すのか。どうぞご期待ください。


権代敦彦
指の呪文
ピアノのための

委嘱:大阪大学
演奏時間:14分

ピアノの鍵盤の丁度真ん中から、3本の指によって1音ずつ降りてくる3つの音。それらは、呪文を唱えるように、寄せては返す波のように、何度も何度も繰り返 され、やがて、10本すべての指によって、すべての鍵盤に広がった響きの渦は、最後にピアノの内に封じ込められ、記憶の奥底にしまわれる。

権代敦彦

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ベーゼンドルファー1920 演奏とお話 Vol. 2「音楽の力、音楽の無力」
2013年3月10日(日)14:00開演 大阪大学会館 講堂
http://21c-kaitokudo.osaka-u.ac.jp/events/2013/0310
北村朋幹(ピアノ)

関連ニュース
権代敦彦《クロノス》と《カイロス》 ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2012(2012年5月1日付)

ブリテン《カーリュー・リヴァー》上演 神奈川芸術劇場『隅田川二題』

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Benjamin Britten, 1956 - In Japan Playing a Shō
courtesy of www.britten100.org

神奈川芸術劇場(KAAT)で3月22日と23日『隅田川二題』と題した公演が行われ、日本舞踊『清元 隅田川』とともに、今年生誕100年を迎えるベンジャミン・ブリテンのオペラ《カーリュー・リヴァー》が上演されます。



1964年に作曲された《カーリュー・リヴァー》は、能楽『隅田川』を基にウィリアム・プルーマーが脚本を執筆。イギリス東部の架空の川「カーリュー川」を舞台に、狂女(テノール)、 渡守(バリトン)、旅人(バリトン)、修道院長(バス)の4つの男声を中心に物語が展開されます。日本舞踊花柳流家元、4代目花柳壽輔による今回の演出では、これらの役すべてにそれぞれ歌手だけでなく舞踊家が配役されています。指揮は角田鋼亮。


神奈川芸術劇場『隅田川二題』
2013年3月22日(金)19:00、3月23日(土)16:00
http://www.kaat.jp/pf/sumidagawa.html

● ベンジャミン・ブリテン《カーリュー・リヴァー》
演出:花柳壽輔
指揮:角田鋼亮
出演:鈴木准(狂女)、大久保光哉 (渡守)、井上雅人(旅人)、浅井隆仁(修道院長)、東京少年少女合唱隊(霊の声)、篠井英介(狂女・舞踊)、大沢健(渡守・舞踊)、花柳登貴太朗(旅人・舞踊)、坂東三信之輔(修道院長・舞踊)

● 日本舞踊『清元 隅田川』
出演:花柳壽輔、花柳基、清元志佐雄太夫、清元美治郎ほか

錬肉工房公演『オイディプス』音楽は細川俊夫

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細川俊夫の音楽を用いた、錬肉工房『オイディプス』の公演が、3月6日から10日にかけて東京の上野ストアハウスで行われます。

ギリシャ悲劇『オイディプス王』に基づくこの舞台作品では、《線 I》《沈黙の花》《ランドスケープ I》《ランドスケープ Ⅴ》《リート》《フルート協奏曲「ペル・ソナーレ」》といった室内楽作品を中心に、細川の音楽が使用されています。


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錬肉工房公演オイディプス
2013年3月6日(水)〜3月10日(日)上野ストアハウス
http://www.renniku.com/
作:ソポクレス/高柳誠
構成・演出:岡本章
音楽:細川俊夫
出演:櫻間金記 田中純 笛田宇一郎 鵜澤久 塩田雪 岡本章 北畑麻実

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ドイツ・グラモフォンとカール・ジェンキンス録音契約 新作『Adiemus Colores』リリースへ

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Karl Jenkins & Mark Wilkinson, president of Deutsche Grammophon
© Chris Donovan / Deutsche Grammophon

ドイツ・グラモフォンは今月1日、作曲家カール・ジェンキンスと新たな録音契約を結び、第一弾としてジェンキンスの新作『Adiemus Colores』を今夏にリリースすることを発表しました。

1995年にデルタ航空のCM音楽《アディエマス》が瞬く間に世界的なヒットとなった作曲家カール・ジェンキンスは、世界中で150万枚を売上げたファースト・アルバム『アディエマス:ソング・オブ・サンクチュアリ』に始まるアディエマス・シリーズで大きな成功を収め、また合唱とオーケストラのため作品群によってクラシックのジャンルにおいても確固たる地位を確立しています。日本においては、1999年から2年間45回にわたり「NHKスペシャル」として放送された連続ドキュメンタリー番組『世紀を越えて』のために書かれた、同名のテーマ音楽《世紀を越えて》(Beyond The Century)によって一躍有名となり、同番組終了後も、この作品はアディエマス・シリーズの代表作として根強い人気を誇っています。特に2010年放送の全日空の企業CM『きたえた翼は、強い。』の音楽として採用されたことは記憶に新しいところです。また、2006年には《ベネディクトゥス》がトヨタ自動車レクサスハイブリッドGS450hのCM音楽として使用され、こちらも話題になりました。アディエマスとしては、これまでに2001年(Bunkamura オーチャードホール)、2004年(東京国際フォーラム)、 2006年(Bunkamura オーチャードホール)と、3回の来日公演を行なっています。

アルバム『アディエマスV:ヴォカリーズ』から10年、今回リリースされるAdiemus Colores』(アディエマス・コローレス)は、ラテン・アメリカ音楽のリズム・色彩・響きを取り入れた幻想的な作品集です。「…ドイツ・グラモフォンとの、胸躍るような創造的パートナーシップの機会を与えられたことを、心から光栄に感じるとともに、身の引き締まる思いです。1963年のカラヤンによる『ベートーヴェン交響曲全集』以来、私はこの『イエロー・レーベル』と共にいて、グラモフォンからリリースされた多くの録音は、私のインスピレーションの源泉です」と語るジェンキンス。
『Adiemus Colores』はCDショップなどで先行予約受付中です。


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ジョージ・ベンジャミン:オペラ《Written on Skin》初版限定版フルスコア

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Photo: Clive Barda

ジョージ・ベンジャミンのオペラ《Written on Skin》(2012)の初版150部限定フルスコア(作曲家直筆サイン、シリアルナンバー付)が、Faber Musicから出版されました。

Faber Music | 'Written on Skin' - limited signed 1st edition

作家マーティン・クリンプとの2度目の共作となったこのオペラは、エクサンプロヴァンス音楽祭、ネーデルラント・オペラ、トゥールーズ・キャピトル劇場、ロイヤル・オペラ・ハウス、フィレンツェ五月音楽祭による共同委嘱で制作され、昨年7月エクサンプロヴァンス音楽祭において世界初演が行われました。すでに傑作との呼び声高く、これまでにロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスを含む欧州各地で再演されており、6月と7月にはウィーンとミュンヘンでの公演が予定されています。

クリストファー・パーヴェス(bar)、バーバラ・ハンニガン(sop)、ベジュン・メータ(c.ten)、ジョージ・ベンジャミン指揮、マーラー・チェンバー・オーケストラによる世界初演の模様は、NimbusからCD[NI5885]でリリースされているほか、medici.tvで高品質な録画がアーカイヴ公開されています。


《ヴォツェック》以来のベスト、つまり現代作品の頂点
「ル・モンド」‘12.7.10

現代オペラの、いや、オペラそのものの偉大な瞬間
「ル・フィガロ」‘12.7.10

この暗く、官能的で、暴力的で、苦悩的なオペラは、ジョージ・ベンジャミンのこれまでの作品をも凌駕している
「タイムズ」‘12.7.12

魅了される… 魔法のようだ…
「ガーディアン」‘12.7.8

まず間違いなく、21世紀のあらゆる「ベストオペラ」リスト行き
「フランス・トゥデイ」‘12.7.8

現代オペラに独自の場所を築き上げた輝かしい作品
「フィナンシャル・タイムズ」‘13.3.11

終わった瞬間、またすぐに聴きたくなった... 傑作だ
「ガーディアン」‘13.3.11

これほどまでに魅惑的で心奪われるものに出逢うとは、何という喜びだろう
「テレグラフ」‘13.3.10

たった100分の中で、このオペラは哲学と心理学の広大な領域を旅する
「タイムズ」‘13.3.10

《Written on Skin》は精神に深く沈み込む...
「オペラ・トゥデイ」‘13.3.10

コンポージアム2013「ハリソン・バートウィスルを迎えて」

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©Hanya Chala / Arena PAL

東京オペラシティの同時代音楽企画『コンポージアム』。15回目となる今年は、現代イギリス音楽界を代表する巨匠、作曲家ハリソン・バートウィスルを迎えて開催されます。

東京オペラシティ|コンポージアム2013「ハリソン・バートウィルスを迎えて」

『コンポージアム』は毎年、世界的な作曲家ひとりを審査員に迎えて開催される「武満徹作曲賞」と、その作曲家の作品を特集する個展によって構成され、これまでにアンリ・デュティユー、ジェルジ・リゲティ、ルチアーノ・ベリオ、湯浅譲二、マグヌス・リンドベルイ、スティーヴ・ライヒ、ヘルムート・ラッヘンマン、サルヴァトーレ・シャリーノ、細川俊夫らが登場してきました。

5月23日の個展演奏会「ハリソン・バートウィスルの音楽」では、バートウィスルの洗練されたオーケストレーションを堪能できる3作品:金管楽器、打楽器とコントラバスのための《ある想像の風景 An Imaginary Landscape》(1971年作曲/BBCがISCM音楽祭のために委嘱/ピエール・ブーレース指揮BBC交響楽団が同年初演)、《ヴァイオリン協奏曲 Concerto for Violin and Orchestra》(2009-2010年作曲/クリスティアン・テツラフ独奏、マルチェロ・レーニンガー指揮ボストン交響楽団が2011年に初演)、《エクソディ ‘23:59:59’ Exody》(1997年作曲/ダニエル・バレンボイム指揮シカゴ交響楽団が1998年に初演)が、全曲日本初演として演奏されます。指揮は現代作品のスペシャリストとしてバートウィスルの信頼も厚いステファン・アズベリー、ヴァイオリン独奏はダニエル・ホープ、オーケストラは東京交響楽団です。

5月26日「2013年度 武満徹作曲賞 本選演奏会」では、28カ国97作品の中から審査員バートウィスルによる譜面審査で選ばれた4作品が演奏され、バートウィスルによって最終的な受賞作が決定します。

「2013年度武満徹作曲賞 譜面審査を終えて」ハリソン・バートウィスルのコメント全文

また関連企画として5月21日、「明治学院大学文学部芸術学科講演会〜ハリソン・バートウィスルを迎えて〜」が明治学院大学白金校舎 アートホールで開かれます。講師はバートウィスルと、岡部真一郎(明治学院大学教授/日本近代音楽館副館長)。


バートウィスル
ヴァイオリン協奏曲
Birtwistle: Concerto for Violin and Orchestra

スコア(A4判)
80ページ
A4判 並製本
注文番号: SS 0019
ISBN: 978-0-85162-766-3
出版社: Boosey & Hawkes
¥7,980(税込)
オンラインショップへ


■ 関連ニュース
ハリソン・バートウィッスル 作品カタログ(2012年12月4日付)

《春の祭典》初演から100年 自筆ファクシミリ版スコア 5月に公刊

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1913年5月29日、ストラヴィンスキー《春の祭典》の世界初演がパリ・シャンゼリゼ劇場で行われました。音楽とバレエ、双方の歴史において大きな転換点であるこのセンセーショナルな初演の100周年を記念して、スイス・バーゼルのパウル・ザッハー財団が所蔵するストラヴィンスキー自筆ファクシミリ版スコアが、今年5月に初めて公刊されます。
+++ Boosey & HawkesStravinsky: Rite of Spring Facsimile for 2013

フルスコア自筆ファクシミリ版と、4手ピアノ版スコア(ストラヴィンスキー編曲)ファクシミリ版のほか、ポール・グリフィス、リチャード・タラスキンら18人の著名な研究者たちによる《春の祭典》の小論集(英語)『アヴァター・オヴ・モダニティ:《春の祭典》再考』(ISBN: 978-0-85162-823-3)も同時に刊行されます。すべてブージー・アンド・ホークスのウェブサイトで先行予約受付中です。


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《春の祭典》フルスコア自筆ファクシミリ版
ISBN: 978-0-85162-813-4/編集:Ulrich Mosch/英語・独語による序文付

  • 表現豊かな筆跡
  • 指揮用、出版用の書き込み


《春の祭典》4手ピアノ版スコア(ストラヴィンスキー編曲)ファクシミリ版
ISBN: 978-0-85162-822-6/編集:Felix Mayer/英語・独語による序文付

  • 作曲家公認手書譜(一部自筆あり)
  • 今回初公開

ワーグナー生誕200年 全集版に基づくヴォーカル・スコア新刊

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リヒャルト・ワーグナー生誕200年となる今年、ワーグナーの代表的オペラのヴォーカル・スコアが、ショットから続々と初刊行されています。

+++ Schott Music | Bicentenary Richard Wagner 2013

これらはすべて、ショットから出版されている『ワーグナー全集』に準拠した初めての原典版で、練習番号や小節番号も全集にあわせて記載されています。また、エゴン・フォスら、著名な研究者による序文(独・英・仏の3カ国語)も収録されています。

ラインナップは全11タイトル。既に《さまよえるオランダ人 1841年版》《さまよえるオランダ人 1842-1880年版》《タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦》《ローエングリン》《ラインの黄金》《トリスタンとイゾルデ》《ニュルンベルクのマイスタージンガー》《神々の黄昏》《パルジファル》が刊行されており、当オンラインショップでご注文いただけます。残る《ヴァルキューレ》と《ジークフリート》は今年5月以降に刊行予定です。


さまよえるオランダ人 1841年版
¥7,980

さまよえるオランダ人 1842-1880年版
¥9,030

タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦
¥11,025

ローエングリン
¥9,975

ラインの黄金
¥9,030

トリスタンとイゾルデ
¥9,975

ニュルンベルクのマイスタージンガー
¥11,970

神々の黄昏
¥9,975

パルジファル
¥9,030

ショット・ミュージックのワーグナー出版物カタログ

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ワーグナー生誕200年となる今年、独ショット・ミュージックが出版しているワーグナーの楽譜や書籍を網羅したカタログが制作されました。
+++ Bicentenary – RICHARD WAGNER Complete Catalogue [KAT 3133-99]

こちらのページからPDFファイルをダウンロードできます。

このカタログでは、「ワーグナーの出版社」であるショットが手がける『ワーグナー全集』をはじめ、全集に基いて新刊された『ヴォーカル・スコア』、オイレンブルク版『スタディ・スコア』、よく知られた作品をオーケストラ/アンサンブル/独奏/声楽などお求めやすい編成と価格で紹介する『エディション・ショット』シリーズ、オペラのリブレットを含むワーグナー関連書籍が網羅されています。さらに、ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ、ギャヴィン・ブライヤーズ、アレクサンドル・ローゼンブラットら、現代の作曲家がワーグナー作品に着想を得て書いた作品の楽譜もまとめられています。

細川俊夫《遠い声》ディオティマ弦楽四重奏団が世界初演

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細川俊夫の新作、弦楽四重奏のための《遠い声》が、5月11日、イタリア北部トレンティーノ=アルト・アディジェ州ボルツァーノの近郊、マグレにある歴史的ワイナリー「アロイス・ラゲーデル」が開催する「VIN-o-TON」コンサートシリーズにおいて世界初演されます。演奏は細川作品には定評のあるディオティマ弦楽四重奏団

ワイナリーの5代目にあたる現当主アロイス・ラゲーデル4世は芸術に造詣が深く、特に音楽を自らのワイン醸造のインスピレーションの源であるとして、その発表の場を長年に渡って提供してきました。「VIN-o-TON」コンサートシリーズでは、同時代の作曲家に毎年委嘱が行なわれ、新作が発表されています。細川は2013年のアーティスト・イン・レジデンスとして《遠い声》を作曲しました。

この作品はアロイス・ラゲーデルの他、ヴァイマル芸術祭(ドイツ)、ウィグモアホール(イギリス)、モンテカルロ芸術の春(モナコ)による共同委嘱を受けており、5月の世界初演を皮切りに、9月にヴァイマル、10月にロンドン、そして来年3月にモナコでそれぞれ各国初演されます。今年9月にはサントリー芸術財団主催の「サマーフェスティバル2013」において日本初演の予定です。

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©Kaz Ishikawa

細川俊夫
遠い声
弦楽四重奏のための

委嘱:ワイナリー・アロイス・ラゲーデル、ヴァイマル芸術祭、ウィグモアホール、モンテカルロ芸術の春による共同委嘱
演奏時間:14分


私にとって6曲目の弦楽四重奏曲であるこの作品では、極めてシンプルなメロディーが、音楽の背景に隠されている。その中心のメロディー(遠い声)は非常に遅いテンポの内で演奏され、それを構成する音たちは、解体され,一つ一つ異なった楽器法、奏法によって、異なった質感を持たせている。そしてその一つ一つの音は、音風景の柄となったり地となったりしながら、空間化されてゆく。聴く人は、それらの一つ一つの音の風景(ランドスケープ)を感じ取りながら、ゆっくりと音楽時間の庭園を歩いてゆく。

私たちの日常生活では,私たちの内なる声(歌)は日々の慣習のうちに隠されている。その隠された「遠い声」を聴きだそうとすること。その声を空間化して、音楽時間の内側に造形してゆくことが、私にとって作曲することである。

ボルツァーノの滞在で知り合ったアロイス・ラゲーデルは、自然との深い交感(コレスポンデンス)から、自然のエキス(本質)を、上質なワインのなかに醸成させてゆく。私はその方法、生き方に深い感動を持った。私の音楽も、自然との深い交感から出発して、自然の本質を音楽によって表現していきたい。

この作品をアロイス・ラゲーデルに捧げる。

細川俊夫

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VIN-o-TON 2013
2013年5月11日(土)19:00開演
カソン・ヒルシュプルン(ワイナリー・アロイス・ラゲーデル)
ディオティマ弦楽四重奏団
http://www.aloislageder.eu/en/node/1497

細川俊夫のオペラ《松風》新演出でアメリカ初演

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Courtesy of Spoleto Festival USA

細川俊夫のオペラ《松風》が新演出によって制作され、サウス・カロライナ州チャールストンで開催される『スポレト・フェスティヴァルUSA 2013』においてアメリカ初演が行われます。新たに演出を手がけるのは、ニューヨークを拠点に活躍する演出家・映画監督の陳士爭(Chen Shi-Zheng)。5月24日から全5回の公演です。

+++ Spoleto Festival USA 2013 | MATSUKAZE

松風》(2010)は、モネ劇場(ブリュッセル)の委嘱により作曲された、細川の3作目となるオペラ。世阿弥による能『松風』を基にハンナ・デュブゲンがドイツ語の台本を書き下ろしました。2011年5月モネ劇場における世界初演以来これまで、ポーランド国立歌劇場、ルクセンブルク歌劇場、ベルリン国立歌劇場で、サシャ・ヴァルツ演出によるプロダクションの公演が重ねられています。


細川俊夫松風》1幕のオペラ
アメリカ初演 スポレト・フェスティヴァルUSA 2013
5/24・5/26・6/1・6/4・6/8 ドック・ストリート劇場(チャールストン、サウス・カロライナ州)
演出:陳士爭 指揮:ジョン・ケネディ 出演:Pureum Jo(松風) Jihee Kim(村雨) Thomas Meglioranza(須磨の浦人) Gary Simpson(旅の僧)


権代敦彦《終わりのはじまり/終わりのあとで》マインツ州立フィルが演奏

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権代敦彦終わりのはじまり/終わりのあとで》(2003)が5月24日と25日、ドイツ・マインツ州立劇場においてヘルマン・ボイマー指揮マインツ州立フィルハーモニー管弦楽団によって演奏されます。

+++ Staatsorchester Mainz | 8. Sinfoniekonzert

作品は昨年11月に行われた同楽団のワークショップ・コンサートにおいて、クリスティアン・ヨスト、クルト・シュヴェルトシク、ブレット・ディーン、マーク=アンソニー・ターネジらによる他の4作品とともに紹介された後、聴衆のディスカッションと投票によってその中から1つ、今回の演奏会で取り上げられるべき作品として選ばれました。


権代敦彦
終わりのはじまり/終わりのあとで
The Beginning of the End / After the End

室内オーケストラのための

スタディ・スコア B4判 44ページ ¥5,250

いずみホール、紀尾井ホール、しらかわホールの共同委嘱によって作曲。2003年7月12日、大阪いずみホールにおいて、飯森範親指揮いずみシンフォニエッタ大阪が初演。

演奏時間:17分

スティーヴ・マートランド逝去

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Photo: Schott Promotion

80年代中頃から英国を代表する作曲家の一人として活躍してきたスティーヴ・マートランド(Steve Martland) が、5月6日、53歳で亡くなりました。1959年10月10日リヴァプールに生まれ、オランダのルイ・アンドリーセンの下で作曲を学んだ彼は、社会における作曲家の役割を生涯にわたって追求し続けました。

独立独歩で探究心にあふれたマートランドは、若い世代の作曲家や、演奏家、音楽関係者に強い影響を与えた比類のない人物でした。アカデミックな教義よりも音楽的影響の多様性を好んだ彼は、古代と現代、芸術音楽と大衆音楽の垣根を越えて、クラシック分野外のアーティストらと共に多くの仕事をしており、打楽器奏者のコリン・カリーらと結成したアンサンブル「スティーヴ・マートランド・バンド」(Steve Martland Band)を率いて世界各地で公演を行いました。BBCとグラナダ・テレビによるドラマ番組「Wilderness Edge」のためのマルチメディア作品《アルビオン》など、彼の音楽は映画やテレビで度々登場しています。またBBCとオランダ放送協会の共同制作によるルイ・アンドリーセンについてのドキュメンタリー『海との一時的な合意』(A Temporary Arrangement with the Sea, BBC, 1993)の脚本と監督も務めました。

作曲家は社会的現実に対して道徳的責任をもつ、という強い信念が、凄惨な史実を標題とした《バビ・ヤール》(1983)の作曲に彼を向かわせました。3群に分けられた大オーケストラによって最大音量で鳴らされる和音のホケットが、次第に間を詰めるように累積していく過酷な音楽です。この過剰なまでに攻撃的な音の振る舞いはしかし厳密に制御され、その中にはマートランドの全ての音楽がそうであるように、厳しく律された音楽的思考から導かれる、明瞭なヴィジョンが提示されています。また、ポスト・ミニマル音楽の傑作、2台のピアノのための《ドリル》(1987)にみられる、不意に現れる古典的叙情性と、執拗に打ち鳴らされる和音の反復との衝突は、他の英国音楽には無かったマートランド作品の特徴といえます。

オランダ国立バレエによる《クロッシング・ザ・ボーダー》(1990-1991)など、彼のパワフルでリズミカルな作品群は、様々な場で振り付けられてきました。特にロンドン・コンテンポラリー・ダンス・シアターの委嘱による《ダンスワークス》(1993)は、レ・グラン・バレエ・カナディアンや、NYのバレエ・テックなどの新しいプロダクションによって世界中で再演されてきました。2005年にヘンリ・オグイケ・ダンス・カンパニーの委嘱により作曲された《タイガー・ダンシング》は、いまもカンパニーのレパートリーのひとつです。


「今日、もはや音楽家は新しい作品を発表する時に、音楽大学によって作られた伝統を強いられることはありません。むしろ彼らは、解放された美学の環境にいて、例えばデジタルサンプリングされた音や、ジャズ、トリップ・ホップ、バリ・ガムランなどといった、非クラシック音楽の使用に対し、伝統的な奏法技巧やソナタ形式のしきたりに対するのと同じ厳しさをもって向き合わなければいけません。すでにスティーヴ・マートランド・バンドは、この問題について、ほとんどの人がその存在に気づく前から取り組んでいました。」
(BBCミュージック・マガジン)

アンリ・デュティユ逝去(1916–2013)

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Dutilleux composing Le temps l'horloge (© Thomas Hammje)

作曲家アンリ・デュティユの死について

アンリ・デュティユの死をもって、世界の音楽界はひとりの偉大な人物を失いました。フランスの作曲家アンリ・デュティユは1916年アンジェに生まれ、モーリス・ラヴェル、アルベール・ルーセル、クロード・ドビュッシーらの伝統を基礎として、独創的な調感覚と心象風景の輝きによって、独自の音楽言語を創出しました。20世紀後半に広まった音楽的流行には常に通じていながらも、彼は自身の個人的なやり方を模索し、多くの聴衆に支えられた高い人気が彼の才能を立証しました。デュティユは、より本質的な要素に集中することに主眼を置いていたのです。そして妻であるピアニストのジュヌヴィエーヴ・ジョワと共に何十年もの長く充実した音楽生活を送り、オーケストラ作品、歌曲、バレエ音楽、室内楽を含む、極上の作品群を遺しました。

音楽一家に生まれたデュティユは、戦前のパリにおける多様な音楽界を直に体験しました。アンドレ・ジョリヴェ、ダリウス・ミヨー、フランシス・プーランクといった同業者らとの強い交流があったにも関わらず、彼は決して「6人組」や「若きフランス」のメンバーにはなりませんでした。この若き作曲家は自身を、独自の道を探さなければならない芸術家だと既に理解していたのです。

1938年、名高い「ローマ賞」受賞によって、国際的成功への展望はその最初の兆しを見せましたが、運命は立ち塞がりました。デュティユが奨学金とイタリアでの滞在を得た数カ月後、第二次世界大戦の勃発によってこの若き作曲家は帰国を余儀なくされ、短い軍役の後、ピアニスト、編曲家、音楽教師として生計を立てる生活が続きました。そして1942年、彼はパリのオペラ座で非常勤の合唱ディレクターに任命されます。戦後、彼を取り巻く環境は好転していきました。ラジオ・フランスでの仕事の後、彼はエコール・ノルマル音楽院、そしてパリ国立高等音楽院の作曲の教授に任命されました。

1951年と59年に作曲した2つの交響曲によって、ついに彼は国際的な評価を得ました。デュティユはその作品の中で、音楽的主題を始めから全て提示するのではなく、音楽の進展に伴って、その要素を次第に出現させるという構造原理を一貫して用いた最初の作曲家でした。「私が目指しているのは、個々の作品が、有機的な実体として生じるのを可能にすることです」。デュティユは、フランスの古楽やフランドル楽派の大家による繊細なポリフォニー音楽に魅了されていました。またバッハのコラール作品を人生を通じて常に傍におき、ベートーヴェン後期の作品を心の拠り所としていました。これら先人たちの手本は、デュティユが、音の素材を展開し変形し織り合わせたもの、つまり迷宮のような構造原理である「反射する音楽的遊戯」という変容によって、細部に至るまでの正確さでそれらの痕跡を残しています。

セリー技法の痕跡をデュティユの作品のなかに見出すことはできますが、彼は新ウィーン楽派の流儀に対してある程度の懐疑を保っていました。「思うに、私はセリーの作曲家ではありません」。彼は、こうはっきりと表明しています。「私が拒絶するものは、この時代の教義主義と権威信仰なのです」。彼は独自のハーモニーの扱い方を、古典的な和声理論と、様式性、多調性、無調性との融合である「自由な(無)調性の連続体」と定義していました。デュティユはどんなときも、理論に内在する限界に気づいていました。「どのようにして作品は生じるのでしょうか? それは比類ない神秘です」。

オーケストラ作品の成功は、国際的に活躍する有名演奏家たちを惹きつけました。1970年にデュティユは、後に生涯にわたる友情を築くムスティスラフ・ロストロポーヴィチに、チェロ協奏曲《遙かなる遠い世界》を献呈しました。アイザック・スターンはヴァイオリン協奏曲《夢の樹》(1983-1985)を委嘱し、以降、アンネ=ゾフィー・ムター、ドーン・アップショウ、サイモン・ラトル、ルネ・フレミングら著名なソロイストのための委嘱作品のシリーズは今世紀に至るまで続きました。

文学はデュティユにとって偉大な魅力であり、数々の作家たちが彼に霊感をもたらしました。デュティユの神話的かつ有機的な音素材の扱いが、決まってマルセル・プルーストの文学における、変容を経て繰り返される記憶という観念と似かよっていることは、単なる偶然ではありません。最期の数年間、デュティユはシャルル・ボードレールの詩に戻りました。文学と音楽との選択的な親和性は、2009年の間に唯一作曲されたソプラノとオーケストラのための《時の大時計》(2006-2009)における表現にみることができます。

デュティユは絵画にも同様に惹きつけられ、自身を「色の作曲家」と呼びました。《音色、空間、運動》は、ヴァン・ゴッホの画期的な絵画『星月夜』に描かれた夢見るような色彩の星空を、オーケストラの色彩による表情豊かな陰影へと置き換える、注目に値する試みでした。デュティユは、ゴッホの作品だけでなく、その分裂的性格にも心惹かれており、2003年に作曲されたソプラノとオーケストラのための《コレスポンダンス》のテキストの中には、文学作品の引用や私信からの走句とならんで、ゴッホの手記からの抜粋を見つけることができます。

デュティユは明白な政治的主張をもった芸術家に数えられないかもしれませんが、それでもなお彼は、同時代に影を投げかけた歴史的な出来事に対して強い関心を保ち続けた作曲家でした。彼はボストン交響楽団のために、第二次世界大戦終結から50年を記念する《時間の影》(1997)を作曲しました。第3楽章でオーケストラとともに3人の子供の声を配置したこの作品は、アンネ・フランクの追憶に捧げられています。

生涯を通じて自身への厳しい批評を保ち続けたデュティユは、初期の作品群を撤回した上で作品番号を改め、妻ジュヌヴィエーヴに捧げられた《ピアノ・ソナタ》(1946/48)を作品1番としました。彼の高い芸術的基準は、それぞれの作品が唯一無二の音楽世界を顕すことを要求しました。デュティユは、未完の状態または低い水準のまま世に出た作品が存在しないことを保証することに心血を注いだ完璧主義者でした。この、可能な限り最高の品質とは、彼が私たち出版社にもまた要求したものであり、そして我々がデュティユのために常に果たそうと試みた、暗黙の掟でした。すばらしく神経質で、洗練された魅力的なパートナーであった彼との仕事を経験できたことは、私たち全てにとって大きな名誉でした。彼はすべての同僚たちから称賛と尊敬を得ていて、どんなときも彼との仕事は大きな喜びでした。アンリ・デュティユは音楽の世界に、誰も埋めることのできない空白を残していきました。

5月22日朝、パリで、デュティユは97歳で亡くなりました。


Schott Music | Henri Dutilleux (1916–2013) より翻訳)

『ヴォルーミナ』リゲティの全オルガン作品集 WERGOからリリース

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ジェルジ・リゲティ(1923-2006)の遺したオルガン作品は3曲のみですが、これらは彼の作曲の発展において重要な位置を占めているだけでなく、現代オルガン作品の新しい道を切り開いた記念碑的作品群といえるでしょう。リゲティ生誕90年となる今年、彼の全オルガン作品:《ヴォルーミナ》《ハーモニーズ》《クレ》に加え、ピアノ作品《ムジカ・リチェルカータ》全曲のオルガン編曲演奏を収録したアルバムが、独WERGOからリリースされました。

+++ Volumina – Orgelwerke | WERGO

演奏は、シュトックハウゼンの《星座のための12のメロディー》オルガン版(WER 6736)や、ヴォルフガンク・リームのオルガン作品集などをリリースしているドミニク・シュステック。今回のアルバムには、リゲティの電子音楽作品《アーティキュレーション》(1958)に着想を得た、シュステックによる即興作品《Sprachsignale》(2012)も収録されています。

録音はすべて、2012年8月にケルンの聖ペテロ文化ステーションにおいて行われました。同梱されたブックレットには、使用されたオルガンのストップが詳しく記載されています。


György Ligeti
Volumina – Orgelwerke

WER 6757 2

Dominik Susteck: organ

  • Musica ricercata per pianoforte, arranged for organ by Dominik Susteck
  • Two Etudes for organ
  • Volumina for organ
  • Sprachsignale. Improvisations for organ by Dominik Susteck

ヴォルーミナ》(1961/62, rev.1966)では、メロディ、リズム、ハーモニーといった時間的構造が放棄され、トーン・クラスターから作り出される音色によってのみ構築された、静的な音響空間が立ち現れます。シュステックの巧みな音色選びと迫力のある残響によって、この大規模な作品が見事に再現されています。

《2つのエテュード》(1967-1969)のうち、《ハーモニーズ》では、10の音から成る和音が、鳴らされる毎にひとつずつその構成音を変え、またわずかな音色の変化を伴いながら、次第に変容していきます。《クレ》では、非常に速く演奏される8分音符の連なりが、形を変えながらゆっくりと発展するハーモニーの持続として知覚されます。

全11楽章からなる、ピアノのための《ムジカ・リチェルカータ》(1951-53)は、12の半音を用いた作曲の可能性が探求された作品です。第11楽章をリゲティ自身が《リチェルカーレ》としてオルガンのために編曲していますが、今回、全曲がシュステックによってオルガン用に編曲されています。

細川俊夫《旅 X -野ざらし-》田嶋直士が日本初演

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田嶋直士

6月29日、細川俊夫が音楽監督を務めるコンサート・シリーズ「HIROSHIMA HAPPY NEW EAR(広島の新しい耳)」において、細川作曲による尺八とアンサンブルのための協奏曲《 X -野ざらし-》の日本初演が行われます。国内におけるリサイタルに加え、エディンバラ国際音楽祭やザルツブルク・ビエンナーレなど、世界の音楽祭からも数々の招待を受け活躍している田嶋直士(直簫流)と、川瀬賢太郎指揮、広島交響楽団による演奏です。

X -野ざらし-》はライプツィヒ・バッハ音楽祭の委嘱により2009年に作曲。田嶋は同年6月にライプツィヒの聖トーマス教会において、イラン・ヴォルコフ指揮ムジーク・ファブリークと共にこの作品の世界初演を行い、スタンディングオベーションを受けました。「田嶋直士氏との出会いがこの作品を生み出すきっかけとなった」と、細川は語っています(プログラムノート全文)。

川瀬は2012年以降、平田オリザ演出によるオペラ《班女》広島公演、《大鴉》オランダ初演といった細川の舞台作品で成功をおさめ、今年5月には《循環する海》を名古屋で指揮し好評を博しました。細川の信頼厚い田嶋と川瀬の共演に、期待が高まります。同日は《旅 X》の他に、ジェルジ・リゲティ《室内協奏曲》(1969-1970)や、細川の推薦による福井とも子と渡辺俊哉の2人の作曲家による委嘱新作初演といった充実のプログラムです。


HIROSHIMA HAPPY NEW EAR XIV
次世代の作曲家たち III
2013年6月29日(土)15:00 広島アステールプラザ
音楽監督:細川俊夫
指揮:川瀬賢太郎
演奏:田嶋直士(尺八)・広島交響楽団
委嘱作曲家:福井とも子・渡辺俊哉


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